クールな社長の甘く危険な独占愛

「兄貴の武則を残している罪悪感と、期待をどこかで振り切れない、いい子の自分。いらないよな、それ。一番大切なものが何かわかったんだから」

社長がさつきを抱きしめる。ぎゅっと、それでいて優しく。
「大切なのは、愛する人と一緒にいること」

「だから、本気であの親父と家から逃げることにした」

「……いいんですか?」
「いいよ。跡取りは武則って決まってるんだ。その先の心配まであの親父がするなんておかしい話なんだよ。武則が次を誰に引き継ぐか考えればいい話」

「この会社の経営と二足のわらじにしようかと思ってたけど、クビになちゃったから」
社長が肩をすくめる。

「新しくやり直そうと思う」

「落ち込んで、やけになってませんか?」
社長に恐る恐る尋ねた。

「まあ、親父に負けて悔しいけれど、敵対買収をかけられたときにこうなることは予想できたんだ。でも従業員が真剣になってくれた。最後に一緒に頑張れてよかったと思うよ。これは人生の通過点にすぎないんだ。親父に負けたからって、これから負けっぱなしってことはない」

「でも、篠崎さんが、やっぱり社長の下で働きたいって言ってましたよ」

社長がにやりと笑う。「うれしいけど、篠崎さんにはここに残ってもらうかな。それに俺そっくりの次がくるし」

「そっくり?」
「そう、次は武則がここを任される。俺よりいいだろ?」
「……そうですね」

さつきが言うと「コノヤロ」とさつきをくすぐる。

さつきは身をよじって笑った。

< 203 / 204 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop