強引同期が甘く豹変しました
「っていうか…話を一旦戻そう。一体あんたは私をどこに連れて行こうとしてるわけ?」
そう聞きながら、目の前に立つ矢沢を見上げた。
相変わらず背が高いやつだ。見上げなきゃ目も合わない。
たしか181センチだっけ?
入社してすぐの頃、新入社員の歓迎会で各自自己紹介をしていた時にそう聞いたような記憶がある。
「どこに行くって、家探したいんだろ?」
「えっ?…ま、まぁ…いい部屋があればね」
「だから、さっき話した仲介業やってる俺の知り合いを紹介してやろうかと思って」
「い、今から⁉︎」
「そっ。ここからわりと近いし、事務所。歩いて10分てとこかな」
私を見下ろしながら、矢沢はそう言った。
だったら…先にそれ言ってから歩いてほしかったんですけど。
「あれ?でもおまえ、最近彼氏と同棲始めたとかじゃなかったっけ?」
しかもそれ、今聞く?
「あ、もしかして別れたとか?」
しかもそこ、ストレートに聞いちゃう?
わざわざ説明するのも何だか癪で、どう答えようかと、私は数秒黙り込んでしまった。
すると矢沢は偉そうな口調で先に口を開いてきた。
「だから早まって同棲なんてやめとけって言ったのに」
そして何だか呆れたようにため息をつかれた。
「かっ、関係ないでしょ?矢沢には」
思わずムッとして、私はわざと矢沢を睨む。
「何で?俺にも多少は関係あるだろ」
「全然ないよね?」
「あるある、だって同期じゃん。関係ありありっしょ」
「…あのさぁ、今そんなくだらない会話に付き合ってるヒマないから」
「相変わらず冷たいなぁ、おまえは」
「矢沢がふざけるからでしょ?」
私がそう返すと、矢沢は悪びれる様子もなく私にニッコリと微笑んだ。