御曹司と愛され蜜月ライフ
「あ……私は、卯月 撫子といいます」
「撫子さん? 素敵なお名前ですね」
にこにこと笑みを絶やさない絢巳さん。この人のまわりだけ空気が春っぽくて、マンガに例えれば常にお花が飛んでいるようだ。
ありがとうございます、とまた軽く会釈して頭を上げたときに、なんだか渋い表情をしている近衛課長と視線が合った。
……課長?
その顔のまま、課長が口を開く。
「……卯月。おまえも名前くらい知ってるだろうが、絢巳さんはコノエ化成のお得意様である姫野建設の現社長のご令嬢だ」
「ごっ、」
ご令嬢……??!! 姫野建設といえば、ウチもかなりお世話になってるあの準大手ゼネコンだよね??!
まさか、こんなところで正真正銘のお嬢様にお会いできるとは。けれどもなるほどたしかに、彼女の質の良さそうなワンピースもお上品な立ち居振る舞いも、お嬢様だと聞けばすんなり納得できる。
「もう、律さん。私が社長の娘だからといって、私自身に何か特別影響力があるわけでもないですし」
くちびるを小さくとがらせて、絢巳さんが近衛課長を見上げる。
そんな少し子どもっぽい仕草も、素材がいい彼女がすればとてもかわいらしく絵になった。
そして私は、思い出す。
近衛課長が電子レンジでたまごを爆発させた、あの事件の日。
御曹司である彼がこの安アパートに引っ越して来た理由を話してくれた、あのときのこと。
『見合いとはいっても、すでにほとんど決定している政略結婚だ。……相手はコノエ化成の得意先である建設会社のご令嬢でな。俺をダシにここらで太いパイプを作っておこうという魂胆らしい』
もしかして……この、絢巳さんが。
近衛課長の、お見合い相手……──?
「突然押しかけて来てしまって申し訳ありません。……今日は私、律さんに大事なお話があってまいりました」
そう言って彼女は、とびきり美しく微笑んだ。
「撫子さん? 素敵なお名前ですね」
にこにこと笑みを絶やさない絢巳さん。この人のまわりだけ空気が春っぽくて、マンガに例えれば常にお花が飛んでいるようだ。
ありがとうございます、とまた軽く会釈して頭を上げたときに、なんだか渋い表情をしている近衛課長と視線が合った。
……課長?
その顔のまま、課長が口を開く。
「……卯月。おまえも名前くらい知ってるだろうが、絢巳さんはコノエ化成のお得意様である姫野建設の現社長のご令嬢だ」
「ごっ、」
ご令嬢……??!! 姫野建設といえば、ウチもかなりお世話になってるあの準大手ゼネコンだよね??!
まさか、こんなところで正真正銘のお嬢様にお会いできるとは。けれどもなるほどたしかに、彼女の質の良さそうなワンピースもお上品な立ち居振る舞いも、お嬢様だと聞けばすんなり納得できる。
「もう、律さん。私が社長の娘だからといって、私自身に何か特別影響力があるわけでもないですし」
くちびるを小さくとがらせて、絢巳さんが近衛課長を見上げる。
そんな少し子どもっぽい仕草も、素材がいい彼女がすればとてもかわいらしく絵になった。
そして私は、思い出す。
近衛課長が電子レンジでたまごを爆発させた、あの事件の日。
御曹司である彼がこの安アパートに引っ越して来た理由を話してくれた、あのときのこと。
『見合いとはいっても、すでにほとんど決定している政略結婚だ。……相手はコノエ化成の得意先である建設会社のご令嬢でな。俺をダシにここらで太いパイプを作っておこうという魂胆らしい』
もしかして……この、絢巳さんが。
近衛課長の、お見合い相手……──?
「突然押しかけて来てしまって申し訳ありません。……今日は私、律さんに大事なお話があってまいりました」
そう言って彼女は、とびきり美しく微笑んだ。