御曹司と愛され蜜月ライフ
「卯月?」



背後からかけられた声に、反射的に振り返った。

そこにはスーツ姿の近衛課長が、きょとんと不思議そうな顔をして立っている。



「っか、ちょう、」

「どうしたんだ、こんなところに立ち止まって──」



課長の視線が、私の隣りにいる女性へとスライドした。

メガネの奥のその瞳が、驚いたようにまるくなる。



「……絢巳(あやみ)さん? どうして、ここに……」

「律さん!」



近衛課長と対面したとたん、ぱあっと、女性の顔が明るくなるのを間近で見た。

『アヤミさん』と、課長は女性の名前を呼んだ。答える彼女も、課長のことを名前で呼んでいて……。

一気に指先が冷たくなっていくような感覚がして、どくんと、心臓が嫌な音をたてる。



「どうして、卯月と絢巳さんが一緒に?」

「まあ、この方は卯月さんとおっしゃるのですね。私が律さんのお住まいを探して迷っているところを、ご親切に助けてくださったんです」



美男美女。そんな言葉が似合うふたりが並んで会話をする様は、どこからどう見てもお似合いで。

……私、なんか。全然、間に入れない空気があって──……。


くるりと絢巳さんが振り返り、私と目が合った。

ドキ。ひときわ大きく心臓をはねさせる私の前で、彼女がふわりと顔をほころばせる。



「ご挨拶が遅れて申し訳ございません。私、姫野 絢巳(ひめの あやみ)と申します」



何から何まで綺麗な所作で、絢巳さんは一礼した。

我に返った私も、あわててそれにならう。
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