御曹司と愛され蜜月ライフ
まさか、親が決めた婚約者が何の前触れもなく訪ねて来るだなんて緊急イベントが、二次元以外で起こりうるなんて思わなかった。

……しかも無関係なはずの私が、なぜかその渦中に巻き込まれるだなんて。

つい15分前までの自分は、そんなこと夢にも思っていなかったのに。


今私は課長の自宅である203号室で、なぜだか近衛課長・絢巳さんとともにテーブルを囲んで座っている。

先ほど絢巳さんから話があると伝えられた課長は、「それは構いませんが、ひとり暮らしの男の部屋に大事な取引先のお嬢様をお招きすることはできません」と答えた。

まあ、その理屈はわかる。『それなら私はどうでもよかったのかよ』というツッコミはさておき、相手が大企業のご令嬢ともなればそのあたりの問題に必要以上に配慮するべきなのは仕方ないことだろう。


で、ここまで聞いた私は、近衛課長がこのまま絢巳さんを連れてどこかのオシャンティーなカフェにでも移動するのかと思った。

けれども課長は、私の予想を覆すとんでもないことを言ってのけたのだ。



「……ですので、ふたりきりを避けるために、私の部下である卯月を同席させていただいてもよろしいですか?」



『ハァーーー??!!』だ。私の頭の上に、クエスチョンマークとビックリマークが一気に10個ずつくらい現れた。

そもそも私は、近衛課長の直属の部下ではない。まあそれは、社外の人間である絢巳さんにはあまり関係ないかもしれないけど。

いや、というか常識的に考えて、普通婚約者(仮)と話すのに別の女同席させるか??!! しかも今日会社休み!! 完ッ全にプライベート!!!


ギッと睨むように近衛課長へ目を向ける。課長は私の視線なんてまるで感じていないかのように、絢巳さんの反応を待っていた。

パチパチとまばたきを繰り返した彼女が、ふと私へと顔を向けた。じっと私のことを見つめたかと思えば、にっこり、愛らしい笑顔を浮かべる。



「ええ、構いませんよ」



──かくしてこの、修羅場にしては和やかな雰囲気が流れる異色メンバーの空間が出来上がったのだ。
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