御曹司と愛され蜜月ライフ
私は正座したひざの上の手をぎゅっと握りしめながら、自分の右隣りにいる人物を盗み見た。
こんな状況にも関わらず、近衛課長は優雅に紅茶を飲んでいる。……私が! 準備した!! 紅茶ですけどね!!!
この生活能力皆無御曹司の部屋に、予備のカップなどが置いてあるわけもなく。
すっかり存在を忘れていたアイスとともに仕方なく私が一度自宅に戻り、戸棚の中に眠っていたちょっとおしゃれなティーカップを引っぱり出して3人分の紅茶を用意したのだ。
ちなみにそのとき、絢巳さんには私と近衛課長が隣人であるとうっかりバレてしまい。「まあ、律さんと卯月さんのお部屋はお隣り同士なのですね」となんだか楽しげに言われた。あああ……。
「それで、絢巳さん。私に話があるとは、どういうことでしょうか?」
カップをソーサーに置いて、ようやく近衛課長が切り出した。
仕事中ほどではないにしろ、課長の堅い声に自然と私の背筋も伸びる。
私たちの向かい側にいる絢巳さんも、そっとティーカップをソーサーに戻した。
その桜色のくちびるが、憂いを帯びた吐息をもらす。
「律さんも……ご存知ですよね? あなたと私のお父様が、私たちふたりの縁談を進めていることは」
彼女の言葉にどくんと心臓が鳴った。反射的に課長を横目で確認すれば、彼は絢巳さんを見据えたまま一切表情を変えず、ひとつうなずいただけだ。
「ええ、知っています。新年度に予定されている私の昇進と同時期に正式なお見合いを行うと」
「今日はその件でお願いがあり、こうしてまいったのです」
そうきっぱりと話す絢巳さんの声音も表情も、さっきまでのやわらかい雰囲気が嘘のように凛としていた。
その気高い振る舞いに、息を飲む。彼女はテーブルから姿を現すように身体をずらすと、綺麗に三つ指をついて私たちに頭を下げた。
「律さん、お願いします。どうかそのお話、お断りさせていただきたいのです」
……え??!
絢巳さんの予想外な言動を前にして、私はぽかんと彼女を見つめてしまった。隣りにいる課長もさすがに驚いたらしく、目をまるくしている。
こんな状況にも関わらず、近衛課長は優雅に紅茶を飲んでいる。……私が! 準備した!! 紅茶ですけどね!!!
この生活能力皆無御曹司の部屋に、予備のカップなどが置いてあるわけもなく。
すっかり存在を忘れていたアイスとともに仕方なく私が一度自宅に戻り、戸棚の中に眠っていたちょっとおしゃれなティーカップを引っぱり出して3人分の紅茶を用意したのだ。
ちなみにそのとき、絢巳さんには私と近衛課長が隣人であるとうっかりバレてしまい。「まあ、律さんと卯月さんのお部屋はお隣り同士なのですね」となんだか楽しげに言われた。あああ……。
「それで、絢巳さん。私に話があるとは、どういうことでしょうか?」
カップをソーサーに置いて、ようやく近衛課長が切り出した。
仕事中ほどではないにしろ、課長の堅い声に自然と私の背筋も伸びる。
私たちの向かい側にいる絢巳さんも、そっとティーカップをソーサーに戻した。
その桜色のくちびるが、憂いを帯びた吐息をもらす。
「律さんも……ご存知ですよね? あなたと私のお父様が、私たちふたりの縁談を進めていることは」
彼女の言葉にどくんと心臓が鳴った。反射的に課長を横目で確認すれば、彼は絢巳さんを見据えたまま一切表情を変えず、ひとつうなずいただけだ。
「ええ、知っています。新年度に予定されている私の昇進と同時期に正式なお見合いを行うと」
「今日はその件でお願いがあり、こうしてまいったのです」
そうきっぱりと話す絢巳さんの声音も表情も、さっきまでのやわらかい雰囲気が嘘のように凛としていた。
その気高い振る舞いに、息を飲む。彼女はテーブルから姿を現すように身体をずらすと、綺麗に三つ指をついて私たちに頭を下げた。
「律さん、お願いします。どうかそのお話、お断りさせていただきたいのです」
……え??!
絢巳さんの予想外な言動を前にして、私はぽかんと彼女を見つめてしまった。隣りにいる課長もさすがに驚いたらしく、目をまるくしている。