御曹司と愛され蜜月ライフ
しばらく黙っていた課長が、そのときふっと、吐息まじりの笑みをこぼした。
「……顔を上げてください、絢巳さん」
近衛課長の言葉に、おそるおそるといって様子で絢巳さんが身体を起こす。
そんな彼女を見つめる課長の口元は、緩く持ち上がっていた。
「いや、参りました。今まで何度かお会いしただけの印象で、失礼ながら勝手にあなたを淑やかで従順な箱入り娘だと思っていましたが……こんなに情熱的で、行動力のある方とは」
課長が話した内容を聞いて、絢巳さんが恥ずかしそうに頬を染める。
そんな様子もかわいらしい。近衛課長が不意に立ち上がり、彼女のもとへ歩み寄った。
「絢巳さん、謝らなければならないのはこちらの方です。実は私が実家を出てここでのひとり暮らしを決めた理由は、父親の口から出る見合い話を耳に入れたくないだけのためでした」
ぽかんと、今度は絢巳さんが口を開ける番だ。
そんな彼女を、課長はひたすら真剣な面持ちで見据える。
「本来立場の低いこちらがこんなことを申し上げるのは、たいへん不躾とは承知ですが……私としても、今回の縁談は望むところではありません。ただ逃げただけの私とは違い、正面から真摯にぶつかって来てくれたあなたは立派だ。……本当に、申し訳なかった。近衛家の長男として、私の振る舞いは恥ずべきものだったと痛感しています」
ひざにこぶしを置き、近衛課長が絢巳さんに向かって頭を垂れる。
その様子をぼうっと眺めていた彼女が、そこでようやく笑みをこぼした。
「律さんも、頭を上げてください。……こういうのも、失恋になるのかしら。どうやら私たち、お互いにフラれたようですね」
「ええ、そのようです」
顔を見合わせて笑うふたりは、憑き物が落ちたように晴れやかな表情をしていた。
えっと、なんだかよくわからないけれど……とりあえず、お見合いの件は当事者間で一件落着?
完全に空気になっていた私に、ふと絢巳さんが視線を向けてくれた。
「……顔を上げてください、絢巳さん」
近衛課長の言葉に、おそるおそるといって様子で絢巳さんが身体を起こす。
そんな彼女を見つめる課長の口元は、緩く持ち上がっていた。
「いや、参りました。今まで何度かお会いしただけの印象で、失礼ながら勝手にあなたを淑やかで従順な箱入り娘だと思っていましたが……こんなに情熱的で、行動力のある方とは」
課長が話した内容を聞いて、絢巳さんが恥ずかしそうに頬を染める。
そんな様子もかわいらしい。近衛課長が不意に立ち上がり、彼女のもとへ歩み寄った。
「絢巳さん、謝らなければならないのはこちらの方です。実は私が実家を出てここでのひとり暮らしを決めた理由は、父親の口から出る見合い話を耳に入れたくないだけのためでした」
ぽかんと、今度は絢巳さんが口を開ける番だ。
そんな彼女を、課長はひたすら真剣な面持ちで見据える。
「本来立場の低いこちらがこんなことを申し上げるのは、たいへん不躾とは承知ですが……私としても、今回の縁談は望むところではありません。ただ逃げただけの私とは違い、正面から真摯にぶつかって来てくれたあなたは立派だ。……本当に、申し訳なかった。近衛家の長男として、私の振る舞いは恥ずべきものだったと痛感しています」
ひざにこぶしを置き、近衛課長が絢巳さんに向かって頭を垂れる。
その様子をぼうっと眺めていた彼女が、そこでようやく笑みをこぼした。
「律さんも、頭を上げてください。……こういうのも、失恋になるのかしら。どうやら私たち、お互いにフラれたようですね」
「ええ、そのようです」
顔を見合わせて笑うふたりは、憑き物が落ちたように晴れやかな表情をしていた。
えっと、なんだかよくわからないけれど……とりあえず、お見合いの件は当事者間で一件落着?
完全に空気になっていた私に、ふと絢巳さんが視線を向けてくれた。