御曹司と愛され蜜月ライフ
きょとんと大きな瞳をしばたかせ、私と近衛課長の顔を交互に見ていた絢巳さん。

不意に彼女が、さっきまで見せていた可憐なものとは違う、意味ありげな微笑みを浮かべた。



「へぇ――……そう。そうなのね」



な……なんか今の絢巳さん、ちょっと笑顔が黒い感じがしてビビるんですけど。

でもとりあえずは、私たちの関係性を理解してもらえたようでホッとする。


優雅なしぐさで口元に指先を添えながら、彼女は近衛課長に目を向けた。



「どうやら難航してますね、律さん?」



私には何のことやらなその言葉に対し、課長はまた肩をすくめる。



「同じく難航中の絢巳さんに心配していただけるとは光栄です。いろいろと面倒事があるのは、我々の宿命でしょう。……ところで先ほどから鳴りっぱなしのようですが、そろそろ出てあげては?」



こちらもよくわからない返しをして、彼が指さしたのは床に置いている絢巳さんのハンドバッグだ。

そういえば、さっきから小さくバイブの音がしていた。もしかして絢巳さんのスマホか何かだろうか。


「そうですねぇ」と、のんびり答えた彼女がハンドバッグを手に取る。

やはり鳴っていたのはスマホだったようで、絢巳さんは画面をタップするとそのまま耳にあてた。



「もしもし?」

《おじょーさまッ、今どちらにいらっしゃるのですか!!???》



若い男性の声だ。スピーカーになんてしてないはずなのに、相手の声が大きすぎるのか思いっきり会話がもれている。

私だったら驚いてスマホを取り落としていたかもしれない。けれど絢巳さんは慣れているのか、やはりのんびりと言葉を交わす。



「あらあら、青山さん。そんなに大声を出さなくても聞こえてますよ」

《何のん気に言ってんですか何の連絡もなく消えたあなたを俺が一体どれだけ探してると思ってんですか??!! いーから場所を答えろッ!!!》

「あらあらー」



くすくす笑いながら絢巳さんがここの住所を答えると、《絶ッ対にそこから動かないでくださいよ!!??》という念押しとともに電話は切られたようだ。

堪えきれない様子で口元をほころばせながらじっと数秒画面を見つめ、それから彼女がこちらに顔を向ける。
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