御曹司と愛され蜜月ライフ
「……それでは律さん、卯月さん、本当にお世話になりました。いただいた紅茶、おいしかったです。もしまたお会いする機会があれば、そのときはもっとゆっくりお話しましょうね」



ハイツ・オペラの門前まで見送りに立つ私たちに、絢巳さんが深々と頭を下げる。

課長は「迎えが来るまでどうぞくつろいでいてください」と言ったんだけど、彼女はそれを丁重にお断りしていた。

いわく、「青山さんの怒りが律さんや卯月さんにも飛び火したら申し訳ないので」とのこと。……さっきの電話もそうだったけど、どうやら青山さんは自分が仕えるお嬢様にもあまり遠慮がなさそうだ。

なかなかキャラが濃いと思われる青山さん、逆にちょっと会ってみたい気もするんだよな……いややっぱり面倒くさいことになるかな……。


正真正銘のお嬢様である絢巳さん。この女性とただの一般庶民な私は、この先もうこうして出会えることはないのかもしれない。

それでも彼女の言葉がうれしくて、私はうなずいた。



「はい、ぜひ! “すきな人”とのこと、応援してますね」

「ありがとうございます」



頬を染めてはにかむ絢巳さんは、本当にかわいくて素敵だ。

青山さんと、うまくいけばいいな。心からそう思う。



「迎えが来るまでお気をつけて。一番こわい人との戦い、健闘を祈ります」



近衛課長の言葉に対し、絢巳さんは苦笑いだ。



「ええ、そうですね。私にとっての一番の難関は、お見合い相手の律さんではないですから」



……あ。そっか、もともとお見合いの話は、課長と絢巳さんのお父さん同士でしてたんだっけ。

ならばそのお見合いをなくすには、話を持ち出したお父さん本人を説得しなければいけないわけで。……なんだかたしかに、厄介そう。
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