御曹司と愛され蜜月ライフ
「……うん、よし」



もーーー面倒くさい。とりあえず、私がコノエ化成の社員だって課長にバレなければいいんだよ。

じゃあもう、ひたすら避けまくればいいんじゃん。オフバージョンでちょっと顔合わせたくらいじゃ、どうせ仕事中の私とは一致しないだろうし。なるべく会わないように警戒して、今まで通りこのアパートで干物ライフを満喫するの。

しばらくそれを続けてみて、イケそうなら現状維持、ボロが出そうなら諦めて次の住処を探すってことで。うん。


根本的な解決にはなってないってわかってるけど、これが今の私にできる最善策。ていうかこれ以上懸案事項に思考を奪われないための、その場しのぎな逃げ道だ。

雑な作戦だと自覚はしてる。とはいえ、御曹司だなんて雲の上の人が一社員でしかない私ごときの存在に気を取られることも今後ないでしょうし?

うん、大丈夫、イケる。このまま何食わぬ顔で、私はハイツ・オペラの205号室に居座ることができる。そしてめくるめくダラダラゆるゆる干物ライフ!いえす!



「……あ。そういえば、牛乳の賞味期限今日までだっけ」



期限が近い牛乳は、できれば加熱して使いたい。今日はトマトが安売りしてて多めに買っちゃったし、トマトリゾットにでもしようかなー。


突然降り掛かった災難のことは、脳内のとびきり端っこに追いやって。

私はあっさりと、今晩の献立を考えることに意識を向けるのだった。
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