御曹司と愛され蜜月ライフ


◇ ◇ ◇


そうっと、玄関のドアの隙間から外を確認する。

息をひそめてドアに張り付いてるなんて、今の自分の行動がどう見ても不審者だってのはわかるけど致し方ない。

見るかぎり、異常なし。物音もなし。人の気配なし!

ほっと息を吐いた私は、ようやく自分が通れるくらいの幅までドアを押し開けた。


今日は月曜日。世間一般的な土日休みの企業に勤めるOLは、どう足掻こうが仕事なわけで。

そして会社に行くには、203号室の前を通らなければならない。間違っても住人と鉢合わせてしまわないよう、細心の注意を払ってここを切り抜けなければ。


オフ時の手抜きっぷりとは打って変わり、バッチリ仕事仕様に化けた私はあくまで慎重に外へと足を踏み出す。

あくびを噛み殺しながら鍵をかけ、何気なく203号室のドアに目を向けた。


ゆうべ遅くまで、隣りの部屋から何やら物音はしていて。やはり間違いなく、誰かが引っ越して来たのだと確信した。

しかもそれが、同じ会社の御曹司て。そんなマンガだかドラマだかにありそうな展開、まさか自分に降り掛かるなんて思いもしなかったわ……。


とりあえず目下の目標は、近衛課長との遭遇をなるべく回避すること。

あの人が毎日何時に出勤しているかなんて知らないけど……とりあえず始業を大きく早回る時間帯に家を出ることで、朝に鉢合わせてしまうことは避けるつもり。

あーあ、ほんとならあと1時間は寝てられたのに。くっそう、なんで私がこんな目に……って、だから自分が勝手に気まずく感じてるだけなんだってば。あーでもなんで昨日に限ってマスクしてなかったんだ自分……! 
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