御曹司と愛され蜜月ライフ
つい15分ほど前に出たばかりの部屋のインターホンを押す。

すぐに中から足音が聞こえ、鍵をかけていなかったのか間もなくドアも開いた。



「卯月、」

「ハイハイ、失礼しますよー」



家主を半ば押しのけるようにして部屋に上がる。

そういえばさっきも言ってなかったことに気付いたから、今さらながら「おじゃましまーす」とつぶやいておいた。


最初に来たときはあわててたから寝起きそのままの格好だったけど、一応今は着替え済みだ。

コットンシャツに、足首が見えるまでロールアップしたジーンズ。ノーメイクなのは黒縁メガネで多少カバーできるからそのままで、髪の毛は適当すぎるひとつしばりからシュシュを使って斜め下でまとめてみた。


私の言いつけ通り、課長はちゃんと電子レンジの掃除を済ませていたらしい。

よしよしご褒美ですよー、と頭の中でかなり上から目線なことを思いながら、部屋の中心にあったテーブルにここまで自分が持っていたおぼんを置いた。

自分の家だというのに所在なく立っていた近衛課長を座った状態で振り返り、ポンポンと床を叩く。



「はい。課長、座ってください」



言われるがままに腰をおろす課長。未だ戸惑ったままの彼の前で、すっとおぼんの上にあるものを指さす。



「ご所望の目玉焼きです。黄身の固さの好みがわからなかったので、とりあえず半熟の完熟の中間にしてみました」

「お……おお……?」

「ごはんは冷凍してたもので申し訳ないんですけど、コシヒカリなのでおいしいと思います。あとは僭越ながらゆうべの残りの肉じゃがとほうれん草のお浸しと、それから今作って来たとうふとわかめのお味噌汁です」



近衛課長は、目をまるくして私を見ている。その眼差しがなんだか気恥ずかしくなって来て、思わずテーブルに視線を落とした。

けれどもぐっと気合いを入れ、そこからおそるおそる上目に課長をうかがう。
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