御曹司と愛され蜜月ライフ
その微笑みを見ていられなくて、パッと顔をうつむかせた。

……ずるいなあ、この人。

こんなふうにまっすぐ信用されたら、裏切れない。……裏切りたくないって、強く思ってしまう。

最初っから、そんなこと微塵もするつもりなかったけどさ。


頬が熱い。私の顔、今赤いかも。

それでもなんとか、言葉をしぼり出した。



「お、御曹司のくせにちょろすぎです課長……そんな簡単に、信用しちゃダメですよ」

「ひどい言われようだな。俺、我ながら人を見る目はあると思ってるんだが」



というか御曹司は関係ないだろと、また課長が笑う。

そんな彼の様子に、ますます体温が上がって困り果てる私。


だって近衛課長のこんな表情、きっと会社の人間じゃ私しか知らない。

いつだって冷静な態度で、いつだって厳しく仕事に向き合っている近衛課長。

その彼がこんなに楽しそうに笑うこと、他にどれくらいの人が知ってるんだろう。



「そういえば課長は、お休みの日はコンタクトなんですね」



このままだとどんどんドツボにハマっていく気がして、多少強引に別の話題を振ってみた。

課長は特に不自然には思わなかったらしい。「ああ、」とつぶやいてから目尻を指でこすった。



「いや、裸眼だ。会社のアレは伊達メガネだから」

「え、伊達メガネですか? どうしてまた」



私が問うと、課長はなぜかまた不満げに口を閉じてしまった。

けれど少しの間の後、視線を私から外してつぶやく。
< 42 / 139 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop