御曹司と愛され蜜月ライフ
あまりに緊張感のない自分の振る舞いに、お肉多めのカレールゥをほかほかごはんにかけつつ今さらならながら猛省。

そのお皿を私から受け取りながら、近衛課長はじっとこちらを見つめて来た。



「で? 何かあったのか?」



まっすぐに私を射抜く課長の揺るぎない視線は、たぶん単純な興味。

こうしてプライベートでも顔を合わせるようになってからかなり序盤に気付いたことだけど、私は彼のこの目が苦手だ。

別にこっちが悪いことをしているわけじゃないのに、どうしてか一瞬言葉に詰まって、その視線から逃れたくなる。



「いやあの、別にたいしたことじゃないと思うんですけど。今日は、お給料日だったので……」

「給料日?」



うなずきながら、私は勝手に冷蔵庫から出したウーロン茶のペットボトルとグラスをふたつ持ってテーブルにつく。

成り行きというかなんというか、課長とテーブルを囲むときはいつも決まってこの位置だ。彼がキッチンを正面に見るかたちで、私はその向かい側。



「やっぱりうれしいものじゃないですか、お給料もらえる日って」



それで無意識に鼻歌うたうって、我ながらちょっとバカっぽくて恥ずかしいですが。



「あー、そうか。今日は24日だったな。口座に勝手に振り込まれるものだから、あまり実感はないが」



今日もちゃんと手を合わせて「いただきます」と言ってから、課長はカレーにスプーンを差し入れる。

たっぷりウーロン茶を注いだグラスの片方を彼の前に置けば、今度は「ありがとう」。……ほんと律儀ですね、近衛課長。いや挨拶大事だけど。


いつものことながら、なんとなくくすぐったい思いで自分の分のグラスを両手で弄んでいると、大口開けてカレーを頬張っていた課長が再び話しかけてくる。
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