御曹司と愛され蜜月ライフ
とまあ、そんな風に自分で思いながらも約束の時間は迫っていたわけで。

どうしようもない気恥ずかしさを残しつつお披露目することになった今の私を誰がどう見ても見目麗しい近衛課長に褒めていただけたのは、そりゃもう光栄の極みではありますが。

……けど、やっぱり恥ずかしいものは恥ずかしい……! 誰だどうせならいつもと違う系統の格好してプチ変装しようと思ったのは!! 私だ!!!



「車は、ここからちょっと離れた月極駐車場に止めてあるんだ。悪いが少し歩く」



私の内心の葛藤なんてつゆ知らず、課長はスタスタと歩き出す。

白のカットソーに黒のジャケット、ベージュのパンツという一見どこにでもいそうなシンプルな格好をしている近衛課長。

なのにこの人が着ているだけで、どこぞのモデルさんですか??と問いただしたくなるくらい様になるんだからイケメンは得だ。

……なんかいつも、私ばっかりあわてさせられてて不公平。

肩にかけたバッグの持ち手をぎゅっと握りしめてから、その背中を追った。



「……課長も、似合ってますよっ」



ハイツ・オペラの階段をおりきって隣りに並んだとき、ちょっとした反撃のつもりで小さく言ってみる。

反応をうかがうためにちらりと横を見上げると、近衛課長は私に顔を向け、メガネ越しじゃない素のままの瞳をみはっていた。

どーよ照れろ、とさらに念を送ったのも束の間、ふっと形の良いくちびるが弧を描く。



「……へぇ」



……いや、『へぇ』って。そんな黒い微笑みを浮かべて、何考えてんですか近衛課長。

それきり課長は口を閉じてしまったから、真相は闇の中だ。ダラダラと内心冷や汗をかきつつ、私も黙る。

少しの間を置いて再度斜め後ろからうかがった課長は、すでにいつもと変わらない真顔に戻っていた。

えーっと。さっきチラッと見えたものすごく楽しげでダークな表情は、気のせい?
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