御曹司と愛され蜜月ライフ
ああ、だめ。これはだめなやつだ。
私はもう、他人に自分を理解してもらうことを諦めたはずでしょう? ……理解してもらえないって、思い知ったはずでしょう?
なのにこんなにあっさり、心を許してしまいそうになってるなんて──……自分の単純さに、ほとほと呆れる。
「……あの。というかよく知ってましたね、私が昨日の夜電話してたって」
思考を振り切るように、あくまでなんでもない風を装って話を振った。
でもまあ、これも実際引っかかっていたことだ。どうして私が電話してたこと、課長が知っていたんだろう?
表情を真顔に戻した近衛課長が、こちらへ視線を寄越す。
「まあ、壁越しに聞こえたからな。さすがに内容までは聞き取れなかったが、ひとり分の話し声はわかった」
「あー……」
彼のセリフには、自然と苦い顔になる。
そうだ。今は隣りに課長が住んでるんだから、音に関しては前まで以上に気を付けなきゃいけないんだ。
「すみません、うるさくしてしまって」
「別にうるさいとは思わなかったが。そういえば、最初卯月が血相変えて俺の部屋に来たのも電子レンジの爆発音が聞こえたからだったな」
課長がちらりと背後に見えるハイツ・オペラを一瞥する。
それから前に向き直って歩きながら、至極真面目な表情で淡々と続けた。
「なんなんだこの建物は。こんなに壁が薄くてアレのときどうするんだ」
「は? ……アレってなんですか」
「まる聞こえで困るだろうが、セック」
「わああああほですか!!?」
あまり人通りがないとはいえ、こんな往来でペロッと何を発言しようとしているんだこの男は……!!
反射的に手を伸ばし、ぎゅむ、とその口をおさえつけていた。
「(……ハッ。いくらなんでも、上司にコレはまずいよね??!)」
やってしまってから我に返り、とっさの自分の行動を後悔する。
口元にあてた手はそのままにおそるおそる課長を見上げると、彼は特に動揺する様子もなく目をまたたかせていた。
私はもう、他人に自分を理解してもらうことを諦めたはずでしょう? ……理解してもらえないって、思い知ったはずでしょう?
なのにこんなにあっさり、心を許してしまいそうになってるなんて──……自分の単純さに、ほとほと呆れる。
「……あの。というかよく知ってましたね、私が昨日の夜電話してたって」
思考を振り切るように、あくまでなんでもない風を装って話を振った。
でもまあ、これも実際引っかかっていたことだ。どうして私が電話してたこと、課長が知っていたんだろう?
表情を真顔に戻した近衛課長が、こちらへ視線を寄越す。
「まあ、壁越しに聞こえたからな。さすがに内容までは聞き取れなかったが、ひとり分の話し声はわかった」
「あー……」
彼のセリフには、自然と苦い顔になる。
そうだ。今は隣りに課長が住んでるんだから、音に関しては前まで以上に気を付けなきゃいけないんだ。
「すみません、うるさくしてしまって」
「別にうるさいとは思わなかったが。そういえば、最初卯月が血相変えて俺の部屋に来たのも電子レンジの爆発音が聞こえたからだったな」
課長がちらりと背後に見えるハイツ・オペラを一瞥する。
それから前に向き直って歩きながら、至極真面目な表情で淡々と続けた。
「なんなんだこの建物は。こんなに壁が薄くてアレのときどうするんだ」
「は? ……アレってなんですか」
「まる聞こえで困るだろうが、セック」
「わああああほですか!!?」
あまり人通りがないとはいえ、こんな往来でペロッと何を発言しようとしているんだこの男は……!!
反射的に手を伸ばし、ぎゅむ、とその口をおさえつけていた。
「(……ハッ。いくらなんでも、上司にコレはまずいよね??!)」
やってしまってから我に返り、とっさの自分の行動を後悔する。
口元にあてた手はそのままにおそるおそる課長を見上げると、彼は特に動揺する様子もなく目をまたたかせていた。