御曹司と愛され蜜月ライフ
あっさりうなずいて答える。私は少し迷ってから、そんな課長の横に並んだ。



「あの『話そうものなら』の後って……なんて言って脅そうとしてたんですか?」

「いや、別に。あの言葉に続きなんてないが」

「……はい?」



ホワット? このひと今、なんて言いました?



「アレは別にあえて言葉を切ることで脅かそうとしたわけじゃなくて、単純に続きが思いつかなかったから会話を終了させただけだ。もしかして卯月、いろいろ想像したのか?」

「しますよそりゃ……! 地方異動とかクビとかドナドナとか!!」

「なんだよドナドナって。きみは荷馬車に乗って市場に売られていく仔牛か?」



信じられない。私、勝手に妄想して結構悩んだのに……! 無駄に振り回されただけだったの?!

唖然として近衛課長の整ったお顔を見つめる。そんな私に、彼は小さく首をかしげた。



「じゃあ、もしものとき俺に何されるかは自分で決めろ。望む通りにしてやるぞ」

「はっ、」



ほとんど反射でドキッとする。だって課長の今の言い回し、余裕たっぷりでどこか艶っぽいんだもん。

いやいやいや、ナシナシ今の『ドキッ』は。

えっと、こう、めちゃくちゃ顔の整った人にマンガの中の俺様ヒーローみたいなセリフを言われたから、ちょっと驚いただけだって! ほぼ事故みたいなもん!!


ちょうどそこで近衛課長が立ち止まったから、私もつられて足を止めた。

目の前には、黒いレクサス。どうやらこれが課長の愛車らしい。



「なんでそっち? ふたりしかいないんだから、前でいいだろ」



少しの逡巡の末後部座席のドアに手をかけようとしたら、簡単に助手席を勧められてしまった。

うう、と内心ビビリつつ、おそるおそる前方のドアを開けて車に乗り込む。
< 59 / 139 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop