御曹司と愛され蜜月ライフ
「そういえば、あのとき私のだらけっぷりのことも駆け引きの材料にしてましたけど……私のアレは、別に絶対秘密ってほどのものじゃないんで。それで揺さぶろうったって無駄ですよ」

「あ? そうなのか?」

「私は閉鎖的じゃない干物女なのです」



傍から聞いてればまったく自慢になることではないのだけど、私はドヤ顔で胸を張る。

結果、課長は予想外のところに食いついて来た。



「なんだ、その『ヒモノオンナ』って」

「え……課長、聞いたことないんですか?」



逆に問いかけると、素直にうなずく課長。

……えーっと、なんか、説明を求められるとためらうな。相手は高貴な御曹司だし。


一瞬迷った末、私は言葉を濁すことにした。



「まあ、私みたいな女子のことをそう呼ぶんですよ」

「ふーん……? 今はいろんな言葉があるんだな」



私の適当なセリフにそんな年寄りくさいことを言って息を吐く近衛課長。

うーん、『干物女』くらいの俗語なら知ってそうなもんだけどなあ。干物女なんて生き物とは縁のなさそうなモテまくり課長は聞いたことないのか。



「けどまあ、いいじゃないか、ヒモノオンナ。おいしそうで」

「……響きだけで適当なこと言ってますね」



じっとりした眼差しでつっこむと、課長が声に出して笑った。

その無邪気な笑顔に驚いて、心臓が大きく鳴る。向けていた視線を思わずパッと外した。



「適当ではないがな。干物は好きだぞ」



……なんだかなあ……マイペースな課長に、やっぱり私ばっかり振り回されてる気がする。

だけどそれが、あんまり嫌じゃない。……嫌じゃないから、困るのだ。


サイドミラーに映る自分の顔が、少しだけ赤くなっていることにも参りながら。

それでも私は今度干物焼いてあげようかな、なんて甘いことをまんまと思ってしまうのだった。
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