御曹司と愛され蜜月ライフ
◇ ◇ ◇
その週の日曜日。
近所にある行きつけのスーパーを出た私は、ずっしり中身が詰まったエコバッグを右肩にかけながらのろのろと歩いていた。
自分ひとり分とはいえ、さすがに1週間分の食材ともなると重い。しかも、左手には缶ビールが1ケース入った袋も提げてるし。
スーパーからアパートまでは、徒歩15分の距離だ。やっぱり自転車持つべきかなあと買い物のたびに考えて、それでも最終的に「まあ、どうせ使うのはこのときだけになりそうだし」と思考を放棄するのはいつものこと。
今はもう、夕方の4時くらいだろうか。午前中はほとんどベッドの上でゴロゴロ過ごして、昼過ぎにようやく溜まっていた洗濯と掃除をして。それが済んだらまたテレビやマンガを見ながらダラダラするから、食材の買い出しは毎度こんな時間になってしまう。
顔を上げると、まわりの住宅の隙間から少しだけハイツ・オペラのくすんだアイボリー色の壁が見えてきた。
よっしゃもうすぐ、と少しだけ元気を取り戻した私は、門を曲がったとたん視界に入った光景に思わず足を止める。
視線の先にあったのは、引越し業者のトラック。しかも、ハイツ・オペラの前だ。
誰か引っ越すのかな? それとも、入居してくる?
たしか今空き室なのは、1階の102号室と……私の隣りの、203号室だっけ。
再びアパートの出入り口に向かって歩き出す。通りすがりにちらりと確認してみると、どうやらトラックの荷台からは荷物を運び出している様子だ。
敷地内に入って視線を上げた私は、自分の予想が正しかったことを知る。