御曹司と愛され蜜月ライフ
◇ ◇ ◇
小春日和。
まさにその言葉がぴったりな、ある晴れた土曜の昼下がりのこと。
唐突に自分を襲った『うおおアイス食べたい……!』という欲求にあっさり屈服してコンビニに行っていた私は、その帰り道とても気になる光景を目撃した。
「(……誰だろう……)」
我がお城ハイツ・オペラに続く道の途中に、見知らぬ女性が立っている。
年齢は私と同じくらいだろうか。綺麗な黒髪ロングヘアーをハーフアップにしているその女性は、キョロキョロと不安げにあたりを見回しながらそこに立ち尽くしていた。
道に迷ったのかな? 足を進め、特に深く考えることもなく話しかけた。
「あのー……どうかしましたか?」
私の呼びかけに、ハッとした様子でその人が振り返る。
そこで初めて女性の顔を間近で見た私は、思わず固まった。
……わー、かわいい人。色白で目が大きくて、清楚な印象の顔立ちだ。
『かわいい』よりも『美人』の方が似合う、かな。心の中で勝手に考えながら、ぼうっとその女性に見とれてしまう。
「あの……?」
小さく呼びかけられて我に返った。自分から話しかけておいてだんまりしていた私を、女性が不思議そうに見つめている。
何やってんだ私、と脳内でセルフツッコミしつつ、笑顔を取り繕った。
「ごめんなさい。えっと、こんなところに立ち止まってたから、どうしたのかなーと思って」
そう言うと、目の前の女性が「まあ」と自分の口元を片手で覆う。
「申し訳ありません、通行のお邪魔でしたね。どうぞ、私のことはお気になさらずお通りになってくださいませ」
ふわりと微笑まれ、私は再び面食らう。
……なんか……すごくおっとりした、掴みどころのない人だなあ。
口調といい外見といい、どことなく育ちの良さがうかがえる。改めて見れば、彼女が着ているワンピースもなんだかとても高級そうな……。