御曹司と愛され蜜月ライフ
どうしたもんかなぁと逡巡したのは一瞬のことだ。アイスが入ったビニール袋を持っているのとは反対の手を、ひらひらと振ってみせる。



「あ、いえ。もし道に迷ってたりするんだったら、私でよければお教えできるかなぁと」

「まあ……ご親切にどうもありがとうございます。お恥ずかしいのですが、まさに道に迷って困っていたところでして」



首をかしげつつ頬に手をあて、あまり困っているようにも見えない様子で話す美人さん。

キャラ、濃いな……。この人、アレだ。こないだハマって観てたドラマの、アヤカっていうお嬢様キャラに似てる。


こっそりそんな失礼なことを考えながら、私は受付に座っているときに活用している営業スマイルを浮かべた。



「そうだったんですね。どうぞ、わかる範囲でならご案内しますよ」

「すみません、もしご存知だったら教えていただきたいのですけど……このあたりに、ハイツ・オペラという名前のマンションはありませんでしょうか?」



女性の口から聞き覚えのありすぎる名前が飛び出し、まったく予想していなかった私は反応が遅れてしまう。

……えーっと、ハイツ・オペラ。それはまさに……。



「あのー……マンションじゃなくて木造アパートですけどね。ハイツ・オペラという名前の建物なら、あれですよ」



言いながら、すぐ近くに見えるアイボリー色を人差し指で示す。

私が指さす方向を同じように見た彼女が、目をまるくした。



「あらまあ。こんなに近くにあったのですね」

「あはは……まあ、マンションだと思って探してたのなら見落としても無理はないですね。ちなみに私、あそこに住んでるので。もしよかったら一緒に行きますか?」

「よろしいのですか? ぜひ、お願いします」



にっこり花のような笑顔を向けられ、つられてこちらも笑みを返す。

ちょっと変わってるけどいい人そうだ。あのアパートの住人の誰かに来客だろうか。
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