御曹司と愛され蜜月ライフ
「偶然住人の方に出会えてラッキーでした。このあたりは、まったく来たことがなくて……」

「あー、ちょっとこのへん入り組んでますもんねぇ。お役にたててよかったです」

「本当にありがとうございます。……それで、あの、ラッキーついでにもうひとつ教えていただきたいのですけど」

「はい?」



控えめに訊ねられて首をかしげた。彼女はやはり品良く微笑む。



「あのアパートに、近衛 律さんという男性の方が入居されていると思うのですけど。お部屋の番号って、ご存知ですか?」

「──え、」



つい、反射的に足を止めそうになったところをなんとか堪えた。


……近衛課長? この女の人、近衛課長に用があって来たの?

あれ、でも待って、課長はここに住んでることをまわりの人間には秘密にしてるはず。

じゃあ……どうしてこの人は、近衛課長がここに住んでるって知って──……?



「ああすみません、知らないということでしたら結構ですよ」



黙り込んだ私に勘違いしたのか、女性は感じのいい笑みをたたえたままそう言った。

なんと言うべきか迷う。この人は、課長の所在を教えてもいい相手なのだろうか?

この、綺麗な女性は──……近衛課長と、どういう関係なのだろうか?


ハイツ・オペラの門をくぐったところで立ち止まる。隣りを歩いていた女性も、同じように足を止めた。



「えーっと、あの……その人なら今日はお仕事で、家にはいらっしゃらないですよ……?」



あくまで微笑みはキープしつつ、おそるおそる発言してみる。

一応これは本当のことだ。本当なら土日はお休みだけど、今日の近衛課長は休日出勤らしい。

……さて、どう出る?
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