バンテスト魔法書の保持者
だが人は、魔狼の力を無視しない。


〔魔狼狩り〕なんてものも存在している。


リューラはその事実を知っている。


だけど、知っていたとしてもシンルスを使い魔にすることを選んだ。


使い魔召喚で出てくる魔者は、自分と魔力の質が似ている者。


それは解明されているが、リューラ自身はこう言っていた。


『使い魔召喚、運命の出会い』と。


シンルスと会えた運命を馬鹿にされたことにリューラは怒っているのだろう。


「お前、さっきから黙りだがよ、言いたいことがあれば言えばいいだろ?」


流石に殺気の籠もった目で見つめられているのが気に入らないヤマト先輩。


更にリューラは一言も発していないことが逆に怖い様子。


そんなリューラが、今の言葉で口を開いた。


「なぜ、魔狼使い魔する、可笑しい?」


「なぜって魔狼が‥‥‥」


「なぜ、Fの私を選ぶ、可笑しい?」


「それは実力の無い奴に従うってのは‥‥‥」


「なぜ、シンルス馬鹿にする?」


殺気を向けられてない俺にすら伝わる怒り。


周りにいる全員がリューラに注目し、誰も声を発することは出来なかった。


「別に、Fクラス馬鹿にしようと、他の使い魔馬鹿にしようと、私馬鹿にするのも、どうでもいい。けど‥‥‥‥」


辺りの空気がリューラを囲うように渦巻く。


リューラの魔力が周囲に影響を与えていく。


「私の友、馬鹿にするのは‥‥‥許さない!」


ピリピリとした空気がはじけたかと思うと、
リューラの殺気は収まった。


そしてヤマト先輩は腰を抜かして地面に座り込み、俺を含めた皆が大きく息を吐く。


「シンルス」


リューラはシンルスと広場の出口に向かう。
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