バンテスト魔法書の保持者
イナリシア王女を守る手段を持っていないのだと、イチカ先輩は言うのだ。


どうしてそこまで思っているかはこの際どうでもいい。


でも、これだけは言える。


「自惚れは、身の破滅、呼ぶよ?」


「知ってるわよ」


「イチカ先輩なんて、大した存在、違う」


「‥‥‥‥え?」


これは憶測だが、恐らくイチカ先輩はイナリシア王女のボディーガードの役目もあるのかもしれない。


だから追い詰められているのかはわからない。


「勝手に押し潰されて、バカ」


「な、‥‥‥どういうことよ?」


「モスキース家の長女。それだけでしょう?地位も、権力も、持ってない」


持っているのはモスキース家の領主であるだろうイチカ先輩の父親だ。


それは、貴族全員に言えることかもしれない。


役職を与えられているならまだしも、私たちは所詮まだ学生なのだ。


「先輩の立ち位置は、前でも、後ろでもない。
学園、いるかぎり、イナリシア王女の隣」


「あっ、」


簡単なことに気づかない。


隣にいるのだから、主従の関係も深く掘り下げる必要だってないでしょう?


〈学園内において、身分差は関係ない〉


これは学生証にも記されていること。


「楽しい話も、辛い話も、嬉しいことも、厳しいことも、どうでもいい話も、何でも話せる。
これ、親友。‥‥‥違う?」


顔をあげたイチカ先輩を見つめる。


その瞳はとても綺麗だ。


「ふふ、そうね」


イチカ先輩はそう言って軽く笑う。
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