バンテスト魔法書の保持者

「ありがとうございました〜!」


少しすると、店主さんの明るい声がして、イチカ先輩がお店から出てきた。


「さて、落ち着くところでお茶でもしましょうか。こっちよ」


この変の地形もあまりわからないので、大人しくイチカ先輩の隣を歩く。


相変わらずどこも活気の溢れた街なみだ。


私たちの会話なんて、誰も気にも止めないだろう。


かの有名なモスキース家の長女が、授業をサボって歩いているだなんて誰も夢にも思わないだろうし。


「ねぇリューラ」


「?」


「肯定することが全てじゃないって、わかっているの。‥‥‥‥でも、否定できない。作りあげられた星を壊してしまうかもしれない」


「‥‥‥‥‥」


「あの子は、誰よりも努力しているの。甘やかな生活の中で、1人で血反吐を吐くような努力をしているのを知っている。だから‥‥‥」


「否定、できない?」


「‥‥‥‥」


ふと、イチカ先輩が歩みを止めた。


その顔は伏せられていてよく見えない。


でも、わかる。


きっと泣き出しそうな顔をしているだろう。


‥‥‥私がこの世で1番憎む存在を、この先輩は愛しているのだろう。


「大事な親友って、私は思ってる。だから、あの子の力になりたい」


どうしたらいいかわからない。


「あの子は、褒められても喜んだ顔1つしないのよ」


慰めることもできない、か。


きっとイナリシア王女は、褒められることを望んでいるわけではないのだろう。


かといって、評価されないのならば回りが何かと言ってくる。
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