溺愛伯爵さまが離してくれません!
私、どうかしてた。
伯爵さまがここに来てくれて、そして助けてくれたからって、安心して舞い上がって何やっているんだろう。
こんな風に甘えられる人ではないのに。
立場上してはけない事なのに。

思いあがってはダメよ、リーナ。
彼は伯爵さま。私はただの侍女なの。
どうやってもこれ以上、距離を縮める事は出来ないのよ。

キュッと気持ちを引き締め、先ほどまでの私の行動を、心の中で反省したのでした。

「じゃ、帰ろうか」

「は、はい。・・・ってえ?」

「もうここに用はないでしょ?帰ろう、屋敷へ」

帰ろうって、お休みを一週間取ったはずなのに・・・。

「い、いやでもまだお休みが・・・」

「残りは屋敷で取ればいいじゃないか。君がいないと僕は何故か夜に気持ちよく寝る事が出来ないんだ。浅い眠りのまま朝早くに目が覚めてしまうんだよ。お陰で寝不足でね」

そう言って伯爵さまは目を擦り、眠そうな表情で私を見つめます。
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