強引でもいい、私を奪って。【SPシリーズ大西編】
「もう良いですか。我々には他にも山のように仕事があるので。とにかく、下手に出歩かないようにしてください。あなたが外に出なければ、トラブルは最小限で済むはずなんだ」
言うことを聞かない子供に言い聞かせるように言うと、篠田さんは車のドアを開け、後ろを向いたままだった悠を押し込んだ。
「悠……っ」
ドアが閉められると同時、ロックをされてしまったみたい。
窓に両手を押し付けて貼りつくと、悠がこちらを向いた。
彼は、眉を下げながら、うっすらと笑っていた。
『ごめん、ちょっと怒られてくる』
エンジン音の隙間から、窓越しの悠の言葉がかすかに聞こえたような気がした。
『大丈夫だよ』
そう言っているように見える、口の動き。
こっちも何かを言おうと思うのに、車は容赦なく発車し、私は無様にアスファルトの上に転んでしまった。