強引でもいい、私を奪って。【SPシリーズ大西編】
「オンボロだがよ、処分が面倒で置いてきた家具もあるでよ」
「マジっすか。家具家電つきっすか」
「んだども、ちゃんと漁を手伝えよ」
「もちろん手伝います。っていうか、俺も漁師になりたいです」
悠は人懐っこく、おじいさんに笑いかける。
え、それ本気なの。元SPから漁師って、どういう転職なの。
まあ、本名や戸籍を隠したままじゃ、普通の会社勤めはできないだろうけど……。
「高い給料ははらえねえぞ」
「大丈夫です」
「きっつい仕事だ」
「俺、弱そうに見えるでしょ。でも体力には自信があるんですよ」
悠がその意外にたくましい腕を見せると、おじいさんはやっと、微笑んだ。
「嫁さんを大事にせにゃな」
そう言って立ち上がったおじいさんは、私たちを空き家へと案内してくれた。
その腰は、少しだけ曲がっていた。