強引でもいい、私を奪って。【SPシリーズ大西編】
三日後。
まだ暗いうちに起きだし、悠を送りだす。
その時間、朝三時。
「いってらっしゃい」
「いってきます」
昭和に建てられた古い民家の玄関で、いってらっしゃいのキスをする。
見送りの後は、二度寝の時間。
あと三時間くらい寝て起きたら、洗濯をする。
そのあとはのんびり散歩をしながら買い物をする。
散歩途中は見覚えのある景色ばかりで、思わず立ち止まってしまうことも多かった。
母と一緒に行ったスーパーがまだ残っていて、手を繋いで買い物をしたことを思い出す。
昔通った小学校や、よく遊んだ公園も、色あせてはいたけど、なくなってはいない。
こうしてみると、あまり良い思い出はないはずなのに、とても懐かしいのが不思議。
ただ、実家だけは既に取り壊されて、跡にはアパートがたっていた。
少し寂しいような気もしたけど、気を取り直して歩き出す。
今日の夕食は何にしよう。
贅沢はできないけど、力がつくようなものを悠に食べさせてあげたいな。