I love youを日本語に




講義が終わった時よりもずっと重たい足を引きずって、家の扉を開ける。


いつもより重く感じるのは気のせいだろうか。



なんだか部屋の中が息苦しくて、

カーテンを開けて、窓も開ける。



「……ユウ」


真向いのマンション。

ユウの部屋。


電気が灯っていた。




『…………もしもし』


あれほど言うことを聞いてくれなかったのに

今度は勝手に動く指先。


気づくとユウに電話をかけていた。



「………………」


電話をかけたくせに、

何を言えばいいのか分からない。



『何?間違い電話?』


「もし、もし」


間違い電話だと思われて切られるのだけはイヤで、声を絞り出す。



『なんだ、生きてた。

何?今、家?』


心なしかユウの声がいつもより明るい気がする。


たぶん、アイツのことだ。

無理して明るいユウを演じているのだろう。


「うん、家」


ベランダでユウの部屋に灯る明かりをぼーっと眺めながら答える。



『…………あ、ほんとだ』


少しの沈黙の後、声が聞こえたかと思うと

ベランダにユウが現れた。






< 266 / 274 >

この作品をシェア

pagetop