◇君に奇跡を世界に雨を◇
 
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「あかりちゃんは、何のために走ってたの?」



いつだって、ユウの発言は突拍子もない。

いつもの真夜中の廊下。
自動販売機とソファの置かれたスペースで、ユウは一番大きなソファに腰掛けて私を見上げた。

「何のためって、そんなの……」

決まってるでしょうと言いかけてから、答えを見つけられずに口ごもった私に

「座ったら?」

と、自分の座るソファの横をぽんぽん、と叩いて笑う。

私がユウの隣ではなく向かいに置かれたソファに座ると、つまらなそうに少し口を尖らせた。

「いいタイムを出すために走ってたの? 大会で優勝するために走ってたの?」

「そうだよ、そのために毎日毎日辛い練習をこなして頑張ってた」

「ぼくにはそう見えなかったよ。ぼくには、ただ、走るのが好きだから走っているように見えた」


ユウの言葉に目を見開く。


どうして?
私が走っている所なんてどうして見たことがあるの?

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