◇君に奇跡を世界に雨を◇
木の下の雨
ふぁ―――。
病室のベッドの上で大きくあくびをすると、看護師さんに睨まれた。
「夜中にベッドを抜け出したりするから眠いんでしょ。だめだよ? 消灯時間すぎたらちゃんと寝なきゃ」
「はぁい。ごめんなさい」
昨夜は巡回中の当直の看護師さんに見つかって、私だけが怒られた。
ユウの奴。
松葉杖ついてる私を置いて自分だけ逃げるなんてズルい。
頬を膨らませながら、ベッドの上から窓の外を眺めた。
今は授業中だからか、賑やかな声は聞こえない。
穏やかな昼下がり。
窓から吹いてくる風が心地よくて、つい、うとうとしていると
「ほら、昼寝しない! また夜寝れなくなるよ。運動がてら散歩でもしてきなさい」
と容赦無い看護師さんに、ベッドから追い出された。