きみへの想いを、エールにのせて

「でも私、選手としての香川君は応援する」

「茜……」

「結城君が、競泳の楽しさを教えてくれたから」

「ホントにバカね」


泉は盛大な溜息をつきながら苦笑した。


雄介君には絶対に言わないようにと、理佐に釘を刺しておいた。
結城君が真実を知ったら、すぐに水泳部を解散しそうだから。


「その代わり、辛いことがあったらすぐに言うこと」と念押ししてくれた理佐と泉は、渋々帰っていった。


「ありがとう」


ふたりの後姿を見つめながらそう囁く。
ふたりがいてくれるから頑張れる。


午後からは部活。
少し早めに家を出ようとすると……。


「よぉ」

「卓、君」


卓君が家の前で待ち構えていた。


「どうしたの?」

「どうしたのって、迎えに来たんだろ」


『迎えに来た』って言うけど、彼の家は遠いはず。
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