恋は天使の寝息のあとに
訳の分からないことだらけで、カッと頭に血が上って、瞳がじんわりと滲んだ。

「ダメに決まってるじゃない……!」

冷静になれない頭で、震える声で、私は叫ぶ。

「いくら心菜のためだからって、愛してもない人と結婚するなんて言わないでよ。
そもそも、生活がしんどいからって結婚に逃げること事体、最低だし……」

だって、自分のために、心菜のために、誰かの幸せを踏み台にするなんて。
そんなこと、あってはならない。

「軽々しく結婚なんて口にしないでよ。
結婚って、もっとこう、大事なものでしょう!?」

言いたいことを言い終えて、再び車内に静けさが訪れる。


ほとぼりの冷めた頃に、彼がぽろりと呟いた。

「……まぁ、賢明な判断だ」

は!?

運転席を見ると、何事もなかったかのように飄々としている彼。

もしかして私、からかわれてた?

まさか。その冗談、全然笑えないんだけど。
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