恋は天使の寝息のあとに
きっと恭弥はそのときも、いつものように聞いているんだか、いないんだか、よくわからないような相槌で適当に流していたんじゃないかと思うけれど。

うざったいような顔をしながら、本当はちゃんと、話を聞いてくれているんだということに気がついて。

私に対して、そこまで興味がない訳でもないんだなと、なんだか少し安心した。


「ありがとう」

何に対するありがとうだか自分でもよくわからないけれど、とにかくお礼が言いたい気分だった。

「……何が?」

案の定、恭弥は眉をひそめる。


ひょっとしたら、私は気がつかないうちに、恭弥からたくさんのものを貰っているのかもしれない。
話を覚えていてくれたことだけじゃない。
今日一日だって、何度彼を必要としたことか。

恭弥がいてくれてよかった。


この先どうなるかなんて、ちっとも予測がつかないけれど
できることなら今のまま、三人で寄り添っていられたら

それが私にとって、きっと一番の幸せなんじゃないかと思う。
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