恋は天使の寝息のあとに
廊下をトタトタと走り出す心菜。そのまま恭弥の足元へ突っ込んだ。

「どうした心菜?」

恭弥の言葉遣いが柔らかいものに変わる。
心菜がばんざいのポーズをする。必殺『抱っこして』。
恭弥は仕方なく心菜を抱き上げてリビングへ戻ってきた。

「また今度な」
そう言って心菜を私の腕の中へと引き渡す。


間髪入れず、由利亜さんが口を開いた。

「心菜ちゃん、お兄さんに懐いてますね」

思いがけず話しかけられた恭弥は少し驚いた顔をする。

「……よく遊びにきてるんで」そう言って心菜の頭をぽんぽんと撫でた。

由利亜さんは心菜に目線の高さを合わせてゆっくりと話しかけた。

「優しい叔父さんがいてよかったねぇ。……叔父さん――っていうより、パパなのかな?」

「そう思ってくれてれば、いいんですけど」少しはにかむように恭弥が答える。

「大切にしてもらえてるんだねぇ」

由利亜さんはとろけるような瞳で微笑んだあと、あ、と思い出したかのように恭弥に向き直った。

「心菜ちゃんだけじゃなくて、沙菜ちゃんも大切にしてあげてくださいね」

「え?……はあ」

突然の注文に、何を言われているのかよく分からないと言った顔で、恭弥は曖昧に頷く。
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