涙の雨と君の傘
気づけば、ビニール袋を手に提げて、笹原のアパートの前に立っていた。
来てしまった……。
自分の意思の弱さに呆れはしたけど、後悔はない。
インターホンを押した。
スマホと同じく反応がない。
もう1度押す。
何度も押す。
騒音かっていうくらい連打する。
それでも出ないから、手で強くノックしようとしたけど、その前に一応ノブを回してみた。
「うわ。開いちゃったし……」
起きてるんだろうか。
ドアをそっと開いて中をのぞく。
「ささはら~……?」
部屋の中は薄暗かった。
天気が悪いのもあるけど、カーテンを閉め切っているらしい。
返事がないので、仕方なく靴を脱いで中にあがらせてもらう。
いつも笹原がはいてるローファーの横に、私のローファーを並べた。
大きさが全然ちがう。
その横に出ているスニーカーもすごく大きい。
男の部屋、ということを強く意識した。
でも今日は不可抗力だ。
笹原は病気なんだから。
このままにしてたら死んじゃうかもしれないんだから。
誰にともなく心で言い訳をして、部屋に入った。
「……笹原?」
ベッドの上にこんもりと、大きな山ができていた。
良かった。
ちゃんとベッドで寝てたことにホッとして近づく。
「笹原、生きてる?」
家主は眠っていた。
頬を真っ赤にして眠っていた。
初めて笹原の寝顔を見た。
それはとてもきれいで、可愛くて、幼くて、そして
可哀想だった。
見入っていると、伏せられていた長いまつ毛が震えた。
笹原が、起きる。