涙の雨と君の傘
「……え。なせ……?」
ゆっくりと目を開けた笹原は、私をぼんやりと見上げ、ぼんやりとしたまま呟いた。
ひどいかすれ声。
熱はどれだけあるんだろうか。
「笹原、大丈夫? ポカリ飲む?」
「ぽかり……のむ」
寝ぼけてるのかな。
反応のにぶい笹原は、子どもみたいだ。
ストロー付きのキャップに付け替えて、ポカリを笹原に飲ませる。
頭を支えるために触れた体は、とても熱くてびっくりした。
「笹原、熱計った?」
「ねつ、はかってない……」
「体温計どこ?」
「たいおんけい、ない……」
体温計ないの!?
しまった、家から持ってくれば良かった。
絶対38度以上はあると思う。
「笹原薬飲んだ? 病院は?」
「くすり、のんだ。びょういん、きらい……」
子どもだ。
ここに身長180センチの子どもがいる。
ため息をついて、とりあえずビニール袋から冷えピタを出して白いおでこに貼った。
つめたい、と文句を言われたけどムシ。
「……なんで、なせがいるの?」
少し意識がはっきりしてきたらしい笹原が、不思議そうに聞いてきた。
ゼリーを見せるとうるんだ目を輝かせたから、半身を起こすのを手伝ってあげる。
「学校休むから、生きてるかなと思って連絡したのに、返事がなくて心配したの」
「ごめん……みてない」
「うん。来て良かったよ。笹原ほっといたら食べない飲まないでほんとに死んじゃいそう」
桃のゼリーを手渡せば、笹原は眉を下げて、ありがとうと呟いた。