涙の雨と君の傘
ちょっとごめん、と笹原に断って電話に出る。


のんきな声で、どこにいる? と聞いてきたアイツ。

壁の時計を見れば、もう放課後の時間になっていた。


「いま、学校じゃないんだよね。どうしたの?」


まさかな、と思った。

だってアイツが覚えてるわけないって。

今回は私、催促どころか、匂わせることすらしてなかったから。


浮気に忙しいアイツが、今日は何の日かなんて、気づくはずがないだろうって。


なのに、アイツはことごとく、私の期待を裏切ってくれる。


待ち合わせて、どこか行こうと言われた。

カラオケでも、買い物でも、映画でもどこでもいいって。


それはデートの誘いだった。



どうして。

いつも記念日とか忘れるし、イベントごとがあっても、私の存在自体忘れて他の女を誘うくせに。


どうして。

今日に限ってどうして。


嬉しくないわけじゃないけど……。




私が言葉を選んでいるうちに、待ち合わせ場所を言われて電話は切られてしまった。


相変わらず強引で勝手だ。



でも、そういう所を好きになったのは、私だ。






ふぅと小さく息を吐いた時、突然熱い手に、手首をつかまれた。



「……行っちゃうの?」



不安げに、笹原が言った。


黒い瞳がうるんでいるのは、熱のせいか、それとも。


「うん、ごめん。アイツからだった」

「……そう」
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