As sweet honey. ー蜂蜜のように甘いー
「先お風呂入りなよ」
「大丈夫、千代が先入って」
「そう?なら先入るね」
着替えを持って、バスルームに向かう。
一通り体を洗い終えると、湯船に浸かる。
これまた、無駄にオシャレな円形の広いバスタブ。
いつ見ても、このバスタブは1人で入るものじゃないなと思う。
実際、この家が普通とは違うんだってことは、悠太の家に遊びに行くまで知らなかったけど。
「はぁ……」
白く濁ったお湯に浸かるや否や、つい溜め息が出た。
それは、朝のパパの言葉を思い出したから。
『実は、お前にお見合いをしてもらおうと思うんだ』
お見合い……蘇芳さんって、どんな人だろう
でも、どんなに人柄が素敵な人でも、好きでもない相手と結婚なんて……
パパのあの言い方じゃ、私の有無はあまり関係無さそうだし
「どうしよ……」
悠太にもまだ言ってないし。
というか、言うべきなのかな
こんなこと聞いたからって、悠太がどうにかしてくれるわけでもないし
そもそも、悠太でどうにかなるようなことじゃない。
本当、どうすればいいんだろう
お見合いは受けるって言っちゃったし
とりあえずは、会ってみるしかないのかな
まだ私高校生なのに……
やっぱり、お見合いなんてしたくないな
でもパパのお願いで、会社の為でもあるし……でもでも、だからって私の気持ちは無視なんて、そんなの酷いよ
なんて思いをグルグル考えていたわけだけど、結局拉致が明かなくて、考えるのをやめた。
「暑い……」
少し浸かりすぎた。
頭がボーッとする。
「千代、随分と長いけど大丈夫?何かあった?」
扉越しに、悠太の心配そうな声が聞こえる。
「……だいじょぶ〜」
そろそろ出なきゃ
のぼせそう
「全然大丈夫そうな声じゃないけど」
「だいじょぶだよ〜。ちょっと浸かりすぎてのぼせそうなだけ」
「え、それって大丈夫じゃないよ!」
大袈裟だなぁ
「悠太がそこにいたら出れないー」
「もう……」
足音が遠ざかるのを確認して、湯船から出るも、頭がクラクラして上手く立てない。
「あれ…?」
直ぐに足はもつれ、その場で倒れた。
「ん?千代!?」
意識が遠のく中、悠太が私に駆け寄る音が聞こえた。
「…!千代!」