As sweet honey. ー蜂蜜のように甘いー
1時間以上経っても悠太は戻ってこなかった。
少し不安で、テラスに出てみる。
すると、中央のソファに横たわる人影。
「………」
「悠太?」
そっと近づくと、気持ちよさそうに眠る綺麗な顔が見えた。
「ん……」
「寝ちゃってる」
目の前でしゃがんで、その綺麗な顔にかかる髪を払った。
体は私よりずっと大きいのに
「……かわいいなぁ」
そんなこと言っても、完全に寝ていてびくともしない。
ぐっすり寝てるし、そっとしておいてあげよう
そう思って、立ち上がろうとすると、私を呼ぶ声が聞こえる。
「…ち…よ……」
「え?な、なんだ、寝言か……」
改めて立ち去ろうとするけど
大きい手が私の手を掴む
「っ!?」
「行かないで……」
消え入りそうな、か細い声
私を呼び止めてるの……?
確か小さい頃も、私が先に行っちゃうと『置いてかないで』って泣いていたっけ。
そんなことを思い出し、悠太手を離すと横に座って、その手に改めて私の手を絡ませた。
手の温もりがじんわりと伝わる。
穏やかなその寝顔に、こっちまで眠くなりそう
そんなことを思っていると、本当に眠くなって、そっと悠太の胸元に頭を預けた。
「ん……あれ……寝てた?」
目が覚めた悠太は、右手で眠い目を擦ろうとするが、何かの重みで動かない。
胸元にも何か乗ってる感覚。
「え、金縛り……?」
その重みの先に視線をやると
「千代!?」
そこには、気持ちよさげに寝る千代の姿。
つい大きな声を出してしまって、もう片方の手で口を抑える。
千代が起きてしまっていないか確認するが、起きていないようで安堵する。
「はぁ……。それにしても何で千代がここに?」
右手には千代の手が絡められ、胸元には千代の清楚で可愛らしい顔が見える。
「これじゃあ、起きれないなぁ」
だからと言って起こすのも可愛そうだと思い、しばらくその体制を維持する。
すると、ピクリと動く指と表情。
「へへ……」
緩まっていた千代の手に力が入った。
「もう、可愛すぎ……」
「ん、あ……おはよう?」
寝ぼけた様子で目覚める千代。
そのへらっとした気の抜けた表情にドキリとする悠太。
「千代、ここでなにしてるの」
「………あっ……ご、ごめん!」
「いーよ、別に」
「悠太がなかなか戻ってこないから心配で見に来たんだけど……」
「そのまま寝ちゃったわけだ」
「う、うん」
そっとソファの上で起き上がると、床に座る千代を見つめる。
「……あのさ、お見合いの話だけど、断れないの?」