As sweet honey. ー蜂蜜のように甘いー
悠太の誕生日当日、午前授業だったおかげで、準備は万全。
楽しみで、そわそわが止まらない。
夕方、皆私の家に集まると、飾り付けをした。
毎年、こうやって盛大に行うのが両家の鉄則。
StarRise のメンバーや酒井さん、そして私と悠太の両親が集まっていた。
残すは、『主役』の悠太のみ。
メッセージでやりとりはしている。
『>ごめん、もうすぐ着く!』
悠太だけ、今日も仕事が入っていて、終わってすぐに来る予定になっている。
きっと、仕事現場で既に祝われていることだろう。
しばらくして、再びメッセージが受信された。
『>千代、悪いんだけど、外に出てきてくれないかな?』
何かあったのかな。
『<どこにいるの?』
『>エントランス!』
『<あ、鍵?それなら行かなくても開けるけど……というか、スペアキー……』
『>ポストに何か届いてるみたいだよ。僕、ダイアルキーの番号知らないし、勝手にとるのも、ね?』
それなら……
『<了解。ちょっと待ってて』
「ポストに何か届いてるみたいだから、私ちょっと下に行ってくるね」
「あら、行ってらっしゃい」
お母さんは、既にワインを飲み始めてる。
急いでエレベーターでエントランスに行くと、悠太が待っていた。
って、もうエントランス内に入ってるし……
そうだよ、悠太には合鍵があるんだった。
「えへへ」
何が、えへへなんだか……
壁に埋め込まれ、外から投函され内から取り出せる形のポストのダイアルを回して中を見るけど、何も入っていない。
「何も入ってない……」
「正解!それは、千代を呼び出す口実なんだよね」
「え、どういう______」
「さ、戻ろう戻ろう」
グイグイと背中を押され、事情を聞く隙を与えてくれない。
そのまま家の中のリビング前の扉まで再び戻ってきたわけだけど……
「一緒に入ろうか」
「でも……」
「でもじゃなーい、今日の『主役』は『僕と千代』なんだから」
それと同時に扉を開けると、一斉にクラッカーの音とカラフルな紙が降り注いだ。
「お誕生日おめでとう!」
皆の声が、家中に響く。
え……?
「千代、それに悠太くん、おめでとう」
お父さんの少し涙ぐむ声。
「ほら、2人ともっ!座って座って!」
キャピキャピとした若々しい悠太のママ。
「おや、千代ちゃんのその様子じゃ、自分の誕生日を忘れていたのかい?」
それと、朗らかな悠太パパ。
悠太パパの言う通り、今の今まで自分が今日誕生日だという事を忘れていた。
悠太のことでいっぱいだったからだろうか。
「その様子じゃ、ガチで忘れてたんだな……確かに、ずっと悠太の誕生日だってことしか言ってなかったしなー」
「今日は2人が主役。盛大に楽しもうね」
「早速プレゼントでも渡すか!」
「誰から渡す?あ、圭以外で」
「えぇ!なんで俺以外!?」
「圭が最初だと、千代を独占して離さなそうだからに決まってる」
「相変わらず流の中の俺ってひでーな」
「事実だろ。で、誰から」
「はいはーい!あたしと宗弥から!はい、千代ちゃんどうぞ!悠太にも!」
宗弥というのは、悠太パパの名前。
「気に入ってくれるといいが……」
「開けていい?」
「勿論!」
悠太ママに貰った小さな箱の中には、小さなリング。
サイズは小指ほど。
つまり、これはピンキーリングだ。
「指輪?」
そう発したのは悠太だった。
悠太の手には私と色違いの小さな箱、その中身は私と同じ指輪。
「私と同じだね」
デザインもシンプルなもので、男の子がつけても女の子がつけても似合うものだ。
「ふふ、結婚指輪……なんちゃって」
「ちょ、母さん!?け、けけけ、結婚指輪とか!」
結婚指輪……な、なんてことだ。
「っていうのは冗談よ。あなた達がいつまでも仲良くいられますようにって意味よ」
仲良く……うん、悠太とはいつまでも仲良くありたいな。
「そ、そっか……」
「別に〜?結婚指輪だと思ってくれてもいいけど〜?」
「なっ!何言ってるの!」
私は、さっそく指輪を小指に通した。
「素敵……ありがとう、汐音さん、宗弥さん!」
「喜んで貰えて嬉しいわ」
その後、酒井さんからはうさぎの置物、流くんからはマグカップ、隼人くんからはハンカチ、拓巳くんからは______
「俺を一日弄べる券を…………」
「おい!」
「ってのはまた今度にして、俺からはこれ」
入浴剤セットだ。
見た目も可愛くて、いい匂いがしそう……
ううん、もう既に甘い香りがする。
今度使ってみよう。
そして、圭くんからは
「俺からは、じゃん!香水です!匂いもきつくなくて、千代ちゃんにピッタリのものを厳選してまいりました!これ、非売品なんだよ。てか、千代ちゃん専用!」
な、なんだか凄い………
そういえば、圭くんの両親は香水を作ってる人なんだっけ。
調香師という仕事だ。
「ありがとう。どんな匂いなの?」
「それは、つけてからのお楽しみ。あ、そうだ、ちょーっとつけてみてもいい?」
「うん」
容器の瓶も素敵な香水を軽く首元にかけてくれる。
瞬間、ふわっとお花のような、それでいてフルーティー……なんだが言葉では表しきれないような素敵で不思議な香り。
「凄くこの香り好き……!」
「へへ、喜んで貰えて嬉しいな」
「確かに、千代らしい匂いだな。圭の割にはいいプレゼントだ」
「へいへい、どーも。あ、一応悠太用のもあるんで、どーぞ」