As sweet honey. ー蜂蜜のように甘いー
裏口では、後片付けをするスタッフさん達が、忙しそうに目の前を通り過ぎる。
時折悠太を見ては、目を見開く若いスタッフさん達。
まあ、そうだよね
「伊津希にぃ、凄くかっこよかったね」
「うん」
「男の俺も惚れちゃいそうなくらいにね」
「え、惚れたの?」
世の人々がいう、ホ〇だったり、ゲ〇だったり……?
「惚れたっていうか、男として羨ましいだけだから!僕、あっちの人じゃないからね!?健全だよ!」
「健全なホ___」
「違うから!」
「そんなことはどうでもよくて、伊津希お兄ちゃんって、彼女とかいるのかな」
「そ、そこ気になるの……?てか、どうでもいいのね」
「かっこいいし、美人な彼女いそうだね」
もしいたとしたら、凄く素敵な女性なんだろうなぁ
「そ、そうだね……」
それにしてもあの感じ、懐かしい。
『こらこら、勝手に飛び出したら危ないだろ!』
信号のない横断歩道を勢いよく飛び出そうとしたら、止められて怒られたり……
『ほら、泣かないの。寂しいのは分かるけど、俺だって悠太だっているだろ?』
両親がなかなか帰ってこなくて、寂しくて泣きだしたときも、頭を撫でて慰めてくれた。
その時は、悠太にまで頭なでなでされちゃったんだっけ。
「おーい、千代~。ちーよーさーん」
「へ。ん、なに?」
「ぼーっとしてどうしたの?そんなに伊津希にいに会えて嬉しい?」
「うん。悠太は嬉しくないの?」
「そりゃあ、久々に会えて嬉しいよ?でもさ……」
そこで悠太は言葉を詰まらせた。
「でも?」
「でも……千代が伊津希にいばっかり見るんだもん」
「見ちゃだめなの?」
純粋な疑問だ。
「ダメじゃないけど……」
なんだか歯切れが悪い。
「もう、なに?」
「千代には僕だけを見てほしいの!」
真っ赤な顔でそう言った。
「ば、ば、ば、ばかなの……?」
勢い余って、「馬鹿」なんて言葉を口にしてしまった。
「うぇ!?ち、千代に初めて馬鹿って言われた……」
そう、初めてだ。
今まで悠太に向かって馬鹿なんて言ったことなかったのに……
きっと、悠太がいきなり変なことを言う所為だ。
「あれ、二人ともどうしたの。千代は顔真っ赤だし、悠太はしょんぼりしてるし……」
衣装から、私服姿に着替え、バイオリンケースを背負った伊津希お兄ちゃんが来た。
「気にしないで!」
「気にしないで!」
二人の声が揃う。
「そ、そう……なら、お兄ちゃんは詮索しないぞ?」