As sweet honey. ー蜂蜜のように甘いー
3人で、近くのレストランに入った。
伊津希お兄ちゃん曰く、芸能人御用達の隠れレストランらしい。
一般客とは別に、VIPルーム的なスペースが設けられているんだとか。
まぁ、日本の知り合いに教えてもらったらしいけど。
店内に入り、店員さんに何かメモのような紙切れを渡すと、その店員さんは何かを察したようで、私たちを奥へと案内した。
テーブルと椅子に座ると、メニューを渡される。
とは言っても……
「ん、どうした?まだお腹減ってないか?」
夕飯にしてはまだ早い。
「うん、まだちょっと空いてない」
「僕もー」
「そうか。なら、なにか飲み物とケーキでもどうだ?ここは俺の奢りだ。何を頼んでもいいぞ」
「じゃあ……」
メニューを開いて、アップルティーとチーズケーキを頼んだ。
「さてと、長話は次会った時にしようと思ったけど、今、千代と悠太の思い出話でも聞かせてくれないかな」
「勿論!えと、まず何から話せばいいのかな……」
悩みながらも、伊津希お兄ちゃんと離れてからの事を、少しずつ話し始めた。
「そう言えばこの間、千代のお見合い話で____」
「悠太っ!」
その話はしないでほしかった。
「ご、ごめん。あー、えっと、お似合い話が出たんだけど、相手の人があまりにも酷すぎて断ったんだよ」
「お、お見合い……千代がお見……合い」
「っていうのはもう終わった話で、今もこの通り悠太とは仲が良いし、SterRiseのメンバーともうまくやってるの」
「それは良かった。今度来たときは、そのメンバーにも挨拶したいな」
「じゃあ、パーティーしようよ!」
「はは、良いな、それ。誰か酒の飲めるヤツはいないのか?」
残念ながら、皆まだ未成年だ。
「残念ながら、まだいないよ」
「じゃあ、沙代里さんとワインかな」
「ママ、ワイン好きだもんね。伊津希お兄ちゃんもワイン好きなの?」
「ドイツにいると、割と飲むことが多いからね。いつか千代が大人になったら、一緒に飲みたいな」
「そのときまで待っててくれる?」
「待つ?俺はいつまでも待つよ。……いろんな意味でね」
そんなこんなで、語りつくしていると、あっという間に店の外は暗くなっていた。
お店を出ると、私たちは足を止めた。
「送って行こうか」
「ううん、大丈夫だよ。伊津希お兄ちゃんこそ、疲れてるんでしょう?なら、早くホテルに戻った方が良いよ」
「でも……」
「心配しなくても、悠太がいるから」
「そうかい?」
「僕が命に代えても千代を守るからね!」
悠太の、謎のヒーロー気取り名台詞は置いといて、
「……またね」
「また直ぐに会える。そう信じて待っていて。だから、ほら、泣きそうな顔しないの。可愛い顔が台無しだ」
そう言われて、クッと表情を引き締めた。
「っうん」
「じゃあね」
そういい、宙を返し、私達に背を向けた。
「あ、そうだ」
「ん?」
何か思い出したように、再びこちらを見た。
「千代、耳貸して」
言われたように耳を差し出すと、頬に柔らかい感触と、リップ音が響いた。
「へ」
「お別れのあいさつ」
「な、ななっ。伊津希にい、何やって!」
伊津希お兄ちゃんは、べっと舌をだし悠太に視線を移した。
じゃ、と言ってゆっくりと歩いて行った。
その大きな背中を、私は茫然と見つめるしかなかった。
まだ、頬には確かな感触の記憶が残っている。
多分今、顔が赤いに違いない。
「伊津希にぃめ……」