As sweet honey. ー蜂蜜のように甘いー
「この雑誌の写真、貴方よね?どうして貴方が、拓巳様と一緒に写ってるわけなの?」
その雑誌の写真をよく見れば、確かにあのとき撮った、私と拓巳くんの絡みの写真が掲載されている。
あくまで、ファッション雑誌だ。
発売されていたんだ……
「あの、少し見せてもらってもいい?」
数ページに渡る、私たちの写真。
どれも、私の顔ははっきりと写っている。
「ねぇ、貴方って何者?」
何者と聞かれましても……
「一般人だよ」
としか、言えない。
「一般人の貴方がどうして、こんな風に拓巳様とって聞いてるのよ。何かコネでもあるの?」
口調の強さは、表情にも現れていた。
まるで、捕まって取調室にいるかのような気分だ。
だがしかし、こればかりは口を割るわけにはいかない。
あくまで、事実を述べつつも、公に出来ないことは伏せなくては。
「本当はそこに写るのは私じゃなかったの。でも、そのモデルさんが風邪で寝込んじゃって、たまたま通りかかった私がスカウトされただけだよ」
「本当?」
まぁ、あながち嘘でもない。
「本当だよ。だから、別にコネなんてないし、もうその拓巳様って人と写ることなんてないから」
「そう。話してくれてありがとう。スッキリしたわ。まあ、貴方綺麗だものね。スカウトされてもおかしくないと思うわ。実際、この写真も、可愛いと思う」
「あ、ありがとう……」
彼女は、最後はそう言ってくれた。
……きっと、嫉妬していたんだ
ただそれだけの話だよね
周りに群がっていた女子達も、納得したかのように、自分の席に戻っていった。
これでようやくホッと一息つける。
「おはよ〜」
「あ、おはよう」
「なんか騒がしいけど、何事?」
「え?あ、あぁ……なんだろうね」
「千代は知らないの?」
知ってますとも
私のことだし
「自分の目で確かめてみて。多分、大したことじゃないし、悠太はもう知ってることだから」
「そ、分かった。てか、眠い……昨日の疲れがまだ残ってるのかなぁ」
「お疲れ様」
「今日はオフだから、千代の家でゆっくりしよー」
「ゆ、悠太…!」
少し声が大きいよ、周りに聞こえちゃう
ただでさえ、今日は私に視線が向いてるんだから…
「あ、ごめん……つい」
「ううん」
あ、そうだ
と、悠太はカバンから紙切れを取り出すと、シャーペンで何かを書いた。
それを、私に渡す。
開くと、「今日は肉じゃががいいな」と書いてあった。
夕飯の要望だ。
隣の悠太は、やっぱりニコニコしていた。
その紙の隅に「了解」と書くと、悠太に返した。
「へへ、やったね」