As sweet honey. ー蜂蜜のように甘いー
翌日の夜、今日も撮影の悠太はうちにはいない。
お風呂から上がり、ソファでテレビを見ていると、着信音が鳴った。
それは、ママからだった。
「ママ?」
『千代、見たわよ』
「何を?」
『何をって、日代拓巳くんとの写真よ。綺麗に写ってるじゃない』
「そう?」
『ええ。とても綺麗で輝いてる』
「そうかな」
『私の目に狂いはないわよ』
「そうだよね、ママだもん」
『あなた、私が芸能界から降板してからというものの、芸能界は嫌だって言ってたけど……』
「こ、これは、急な代役でやっただけ。私は芸能界なんて……」
言葉が濁る。
『……あなたは私じゃない。同じ事が起こると思う?そりゃあ表舞台に立てば、スキャンダルなんてつきものよ。でもね、あなたは輝けるの。その輝きを無駄にすることが、私は一番悲しいわ』
「……」
『美味しい林檎を食べずに腐って捨てるのと、同じようなものよ』
「ふふっ、変な例え」
『きっと、周りの人もあなたの輝きには気づいてるはずよ。あなたはあなたらしくいるべきなの。今のままでいいと思うなら、そうしなさい』
「……うん。ちゃんと考えるから」
通話を切ると、私は目を閉じた。
今の私は何だろう
腐った林檎?
ううん、誰にも食べてもらえない、ただの林檎だ
磨けば赤く輝く林檎も、今はくすんでしまってる。
そんなの美味しそうに見えない。
磨くか、それとも、このまま腐って捨てられるのか。
「私次第、なのかな」