As sweet honey. ー蜂蜜のように甘いー
「日比谷さん、見たよ〜、ドラマ!」
「あたしビックリしちゃったぁ。日比谷さんが芸能界デビューするなんてっ」
「本当だよね。てか、いつの間に!って感じ」
「あ、あはは……」
ドラマが放送されると、私は学校へ行く度に囲まれるようになった。
今も、周りには3人の女の子がいる。
初めて話すんだけどなぁ……
「でさ、須永くんと葉山くんと仲良いの?」
「あー、うん、少しだけね」
「葉山くんとは、学校でもよく話してるよね〜、前から知り合いとか?」
「ま、まぁ……」
「えー、それって凄くない!?って、日比谷さん自体、凄いんだよねっ」
「サイン書いて欲しいな~」
「えっと……いいけど、そんないっぺんには無理だよ。それと、あんまり周りに言いふらすのもやめて欲しいな」
「あ、そっか、そうだよね」
「気をつけるね」
「ありがとう」
チラッと隣の席の悠太を見ると、同じく女の子たちの対応をしていた。
実は、流くんに事情を話した時に「明日聞いてみる」なんて言っておいて、結局聞けていない。
今日こそは……!
そう思って、私お昼休みに悠太を呼び出す決断をした。
「ゆ……葉山くん、図書室の整頓に行こう?」
お昼休みにも、周りには女の子たちがいる。
だから、「悠太」とは呼ばずに「葉山くん」と呼んだ。
「あー……そうだね」
やっぱり、悠太はあまり乗り気じゃなかった。
それは、私と顔を合わせずらいから?
「そういえば、二人とも図書委員かぁ。ね、あたし達も手伝おうか?」
「みんなでやればすぐ終わりそだよね〜」
「そうなんだけど、二人でやるように言われてるから、ごめんね」
そんなこと言われてないけど。
「そっか、なら仕方ないか」
なんとか教室から抜け出す。
人気のない旧校舎にやってくると、拓巳くんと隼人くんが待つ図書室ではなく、古びた階段に連れ込んだ。
「ね、ねぇ、なんでこんなところに?」
「話したいことがあって」
「……何?」
少しの間を開けて、悠太は言った。
「悠太はさ、どうしてはっきりと言ってくれないの?」
「それは……」
「ちゃんと言ってくれなきゃ、わかんないよ」
「そんなの分かってるよ。ただ、僕の勝手な思いが、それを阻止してるんだ。自分でそれを解決してから言いたい。なのに、感情が暴走して、あのときはあんなことした」
「……」
「ごめん」
悠太が何を言いたいことは、何となくわかる。
でも、モヤモヤした不確かなもので、答えも見つからない。
「待つよ」
だから、私はそういうしかないんだ。
「……ありがとう、千代」