As sweet honey. ー蜂蜜のように甘いー
翌朝、目が覚めると、一通のメッセージが届いていた。
『おはよう千代ちゃんっ♡大好きだよ♡♡』
あー、夢じゃないんだ。
その二言で、夢うつつだった私の脳は完全に起こされた。
そのまま学校に行くも、隣に悠太はいなかった。
今日も撮影かな。
って、そうだ。
今日は夏休みの教科別講習会で、自由参加だった。
撮影で来られなかったときの遅れを取り戻すために来たんじゃないか。
悠太はこういうの来たがらないし、撮影でも撮影じゃなくてもいるわけないんだ。
というか学年全体でも、2クラス程度(10クラス中)の人数しか来ていないほどだもん。
周りは、真面目そうな人ばかりだ。
……悠太、今頃撮影かぁ
一瞬、キラキラと輝いて見える悠太を想像してしまった。
いけない、いけない。
ブンブンと顔を振った。
すると、今度はまた別のことを思い出してしまう。
『俺、遊びとかしてないよ。だって、千代ちゃんのことが好きなんだもん』
……か。
不意に、昨日の圭くんの言葉が頭をよぎる。
好きなんて言われてもなぁ……
ぼーっとしながら受けていると、あっという間に今日の講習会は終わった。
今日はレッスンも撮影もないから、まっすぐ帰ろう。
だけど、まだ11時だ。
帰って何しよう。
このまま少し街に出るのもいいかもしれない。
そういえば悠太、撮影何時に終わるかな。
スマホで、そうメッセージを送ると『いつ終わるかわからない』と、素っ気ない返信がきた。
なんだか、寂しい。
画面上の文字だから、変に捉えちゃってるのかもしれないけど……多分。
「終わったら、うちに来て……っと」
……今日こそ話をしなきゃ。
そのまま、校舎を出て校門を出ようと______ブゥンッブゥンッ
怪しい、大型バイク。
「あ、千代ちゃん!ナイスタイミングっ!」
「へ?」
大きなゴーグル付きのヘルメットをかっこよく外したその下には、左耳にピアスを付けた圭くんの爽やかな表情。
な、なんでこんなところに!?
ここ、学校なのに……
いくら夏休みだからって。
私は、周りの目を気にしながらも、そっと圭くんに近づくと、小さな声で言った。
まぁ、講習会に来ていたほんのわずかの生徒しかいないけど。
「どうして来たの」
「千代ちゃんのお迎え的な?千代ちゃん、今講習会終わったところ?このあと撮影とかないよね」
「なんでそれを……」
「紗代里さん情報」
ママったら……
「ねえ圭くん、凄い目立ってるよ」
「え、マジ?」
そりゃあ、そうでしょ。
バイクで学校まで来るなんて。
一見、不審者だよ。
というか、既に周りの目が痛い。
「と、とりあえず場所変えよう?先生にバレると厄介だし」
「別に大丈夫じゃない?悠太とかも皆、校長公認のアイドルですー!って堂々といられてるし……」
「それでも!」
「うーん、よし、じゃあ……はい」
「うぇっ?」
ひょいと渡されたのは、ヘルメット。
「ほら、乗って」
「で、でも!」
「え、千代ちゃん走るの?バイクに追いつけるの?」
「そ、そんなわけ……」
「冗談だよ、ほら、乗りなって」
渋々ヘルメットを被ると、バイクに乗る。
「うう」
だけど、なかなか乗れない。
このバイク、乗りずらいよ
「はーい、俺の出番かな」
そう言うと、圭くんは私の腰を掴み、いとも簡単にバイクに乗せてくれた。
「ありがとう」
「いいえ。さ、出発しますよー。捕まって」
大きなエンジン音が響き、バイクは走り出す。
「ひゃ!」
咄嗟に、圭くんの腰に自らの腕をまわした。
そうでもしなきゃ、振り落とされそうだ。