エリート上司に翻弄されてます!
悪い悪い、と水川が少しだけ距離を開けた。
匂いがというか、まずあまり煙草を好いていない。健康を阻害するものには関わりたくない。
「なんてったって俺は皆の王子様だからな」
「心の声漏れてるぞ」
「それに……」
あの日、帰ってきた深桜ちゃんからも匂ったそれ。
それだけで軽く理性は失った。
俺ってそんなに独占欲強い方だったっけ。
あの時は自分の不甲斐なさにも苛立っていたのかもしれない。
それに深桜ちゃんは俺と一緒にいると同居のことがバレるから嫌だというけれど日高相手だとそうは思っていない。
周りから日高と何かあると噂されてもいいということなのだろうか。
俺の方がずっと一緒にいるのに、何で日高の方に懐くんだよ。
「……怖い顔してどうしたの」
「なんでもねーよ、バーカ」
「口悪」
大人気ない、と言われて俺は「そうだよ」と心の中で返した。
俺は自分が思っていた以上に心が狭い。
そして理性も利かない。俺はあの時深桜ちゃんのことを怖がらせてしまった。
きっと今じゃ彼女から自分が納得できるような返事をもらうことは出来ないだろう。
言ってしまったんだったらこれから積極的に行けばいいと思うのに、何処かで嫌われてしまうのではないかという女々しい不安が立ち込める。
だけどこのまま深桜ちゃんと日高が距離を縮めていくのを黙って見ていることはできない。
なのに肝心な深桜ちゃんは今俺の家にいない。
それだけで彼女と一緒にいる時間は減り、俺の焦りだけが増える。