エリート上司に翻弄されてます!
とか、言ってたのに……
「(何で私ここにいるんだろう……)」
見慣れた玄関扉の前で私は1人項垂れた。
定時で仕事を終えると慌てて会社を出た私はそのままの姿でスーパーへと向かった。
暫く家に帰っていないから冷蔵庫の中に何があるのか分からない。取り敢えず使いそうな食材だけを買って乾先輩のマンションへと向かった。
久しぶりに感じる玄関扉に私は溜息を吐く。
あれだけ乾先輩は大丈夫だと言い聞かせていたのに来ちゃうとか、何をやっているんだろう。
いきなり来たって彼を困らせてしまうだけなのに。
私はゆっくりと腕を持ち上げるとインターホンを鳴らす。
部屋にその音が響き渡るのを聞きながら、彼の様子を伺うが物音1つも聞こえない。
寝ているのかもしれない。
私は鞄から合鍵を取り出してドアを開けた。
中の様子は薄暗く、しんとしていた。
「お、お邪魔します……?」
今まで中に彼がいた時は「ただいま」と言っていたから何故かこそばく感じる。
リビングに彼がいないことを確認すると電気を付けてスーパーで買った食材をキッチンへと置いた。
彼は寝室で寝ているのだろうか。
音を立てないようにして寝室へと近付くとゆっくりと扉を開いた。
ベッドの上に山が1つ見える。
中を覗き込むようにして顔を窺うと、彼が心地よい寝息を立てて眠っていた。
「寝てる」
当たり前のことを口にする。